
2026年春、埼玉・上里町の麦畑で進んだ140haのドローン防除
2026年の春、埼玉県上里町の麦畑では、ドローンが低く羽音を響かせていました。上里町種子生産組合様からのご依頼で、エーレンズが赤かび病の適期防除を担った現場の記録です。総散布面積は 140ha 、4月下旬から5月中旬にかけての防除作業となりました。
この記事は、ドローン散布の教科書ではなく、2026年春に実際に進んだ現場のレポートです。「実際にどんな現場で、誰が、どんな機体を操って、どんな空気の中で散布しているのか」を、できるだけそのままお伝えします。赤かび病防除そのものの基礎知識については、すでに公開している 小麦の赤カビ病対策はお早めに をあわせてご覧ください。
上里町は種子小麦の生産日本一|この麦畑から全国の食卓へ
まず最初にお伝えしたいのは、今回の現場である上里町が 種子小麦の生産量で日本一 の地域だということです。スーパーで並ぶ食用の小麦ではなく、来年度の作付に使われる「種」となる小麦を、上里町は日本一の規模で育てています。
ここで作られた種子は、全国の麦産地へと出荷されていきます。つまり上里町の麦畑は、一地域の農業現場というより、 日本全国の麦生産を支える供給源 なのです。
だからこそ、この畑で赤かび病が発生してしまうと、影響は上里町だけにとどまりません。被害を受けた種子が全国に出荷されれば、来年の麦畑に病気が拡散していくリスクがあります。種子用の小麦は、食用麦よりもさらに厳しい品質基準が課せられており、赤かび病の発生は致命的です。
「この畑を守ることは、全国の麦生産を守ること」。今回の140ha案件には、そんな社会的な意義がありました。地域に根ざした中小事業者であるエーレンズが、全国の食を支える麦生産の最前線で果たした役割を、ぜひ知っていただきたいと思います。
トータル140ha・4クール体制で挑んだ赤かび病の適期防除
赤かび病の防除には、開花期に合わせた「適期防除」が欠かせません。タイミングを逃すと薬剤の効果が大きく落ちてしまうため、各圃場の生育ステージを見極めながらの作業となります。
今回の140ha案件では、圃場ごとの開花タイミングが異なるため、 4クールに分けて散布 する計画を組みました。広い面積を、適期を逃さずに散布しきる──これがドローン散布だからこそ進めやすい作業設計です。
4週間の現場では、機体・薬剤・人員を圃場の状態に合わせて柔軟に動かし続けました。早朝の出発、圃場間の移動、バッテリー・薬剤の補給、次の圃場での飛行計画の確認──こうしたサイクルを一日に何度も繰り返します。「ただ広い面積を散布する」のではなく、「適切な圃場に、適切なタイミングで散布する」ことが今回の最大のミッションでした。
計画と実績|荒天と向き合いながらの作業日程
もっとも、現場は計画通りには進みません。今回の4週間でも、荒天による日程調整が何度も発生しました。実際の作業日程を、当初計画と並べてご紹介します。
| クール | 当初計画 | 実際の作業日程 |
| 1回目 | 4月21日〜23日 | 4月21日〜26日 |
| 2回目 | 5月1日〜3日 | 5月3日〜7日 |
| 3回目 | 5月8日 | 5月8日 |
| 4回目 | 5月15日 | 5月15日 |
荒天時には作業を中止し、天候の回復を待って再開する判断の連続でした。風速・降雨・朝露の状態を毎日確認し、機体を上げられる空かどうかを見極める。 「予定通り進めること」よりも「適期を逃さずに散布しきること」を最優先 に、現場判断を重ねた4週間でした。
この柔軟な現場対応は、経験を積んだオペレーターでなければ難しい判断の連続です。広大な面積を抱えながら、適期だけは絶対に外せない。そのプレッシャーの中で組み立てた日程が、上の表に表れています。
現場で操縦するのは女性パイロット・近藤さん|資格と経歴

今回の140ha案件で、実際にドローンを操縦したのは 女性パイロットの近藤さん です。ドローンパイロットの世界はいまだに男性中心で、現場で操縦を担う女性パイロットは決して多くありません。
近藤さんの保有資格は、 JDA(日本ドローン協会)インストラクター と 一等無人航空機操縦士(国家資格) 。一等資格は、有人地帯における第三者上空での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)に対応する最上位の国家資格です。エーレンズではこの一等資格保有者が現場を担い、 技能向上研修への参加 を通じて継続的に技術を磨いています。
大切なのは、近藤さんが「女性だから」現場に立っているのではなく、 国家資格を持つプロのパイロットとして 140haという案件を任されているという事実です。広大な麦畑を前にしても、機体を上げる判断、薬剤の散布ライン、強風時の中断判断──すべてをプロとしてこなしていく姿は、現場の信頼そのものを支えています。
軽量化機体で広がる、ドローン業界の女性活躍
農業用ドローンは年々大型化が進み、機体重量は数十kgに及ぶものも珍しくありません。バッテリーや薬剤を含めると、現場での持ち運び・離着陸時の取り回しは、相応の体力を必要とする作業になっています。これが、これまで現場での女性パイロット参入を難しくしてきた一因でもあります。
エーレンズではこの課題に対して、 軽量化された機体を導入 することで応えています。機体選定の段階から「女性でも無理なく現場作業を担える環境」を意識し、運用設計を行っています。
これは単なる作業環境の改善にとどまらず、 ドローン業界全体の女性活躍を支援する取り組み でもあります。人手不足が叫ばれる農業・ドローン業界において、「体力的に難しい」という理由だけで参入の選択肢を失うのは、業界全体にとっても大きな機会損失です。エーレンズは、機体選定・運用設計という現場レベルから、新しい働き手の選択肢を広げていきます。
大規模案件から見えてきた、ドローン散布の本当の価値

140haという案件から、改めて見えてきたドローン散布の価値があります。
ひとつは、 圧倒的なスピードと均一性 。広い圃場でも一定の散布ラインを保ち、ムラなく薬剤を行き渡らせることができます。地上散布や有人ヘリと比べたとき、散布精度と作業時間のバランスでドローンに勝る選択肢はなかなかありません。
もうひとつは、 作業者の身体的負担の軽減 。薬剤を背負って広い麦畑を歩き回る作業と比べれば、ドローン散布は身体への負担が桁違いに小さくなります。高齢化が進む農家さんにとっても、後継者を確保しにくい産地にとっても、これは大きな価値です。
そして、こうした価値は 大規模案件だからこそ発揮されるものではありません 。数反規模の小さな麦畑でも、地上散布と比べたメリットは同じように得られます。エーレンズでは規模に応じた柔軟な対応を行っており、「大規模だから高い」「小規模だから断られる」ということはありません。
今回の140ha案件は、エーレンズが 一等無人航空機操縦士による飛行 、 作業報告書のお届け 、 軽量化機体の運用 という体制で挑んだ現場でした。消毒を行っても病気が出てしまうことはあり、防除は「ゼロにする」よりも「被害を最小限に抑える」ことを目指す作業です。今回は2回の検査でいずれも赤かび病の発生は確認されませんでしたが、そうした結果にかかわらず、農家さんに安心してお任せいただける土台を整えていくことを大切にしています。
近隣の皆様・作業者の安全を第一に
ドローン散布は、薬剤を空中から散布する作業である以上、 周囲への配慮と作業者の安全確保 が前提となります。エーレンズが現場で大切にしているのは、技術や効率よりもまず安全であるという考え方です。
たとえば荒天時には、 無理な作業は行いません 。風や雨の状況によっては機体の制御リスクや薬剤の飛散リスクが高まるため、安全に飛行できないと判断した場合は、躊躇なく作業を中断・順延します。「予定通り進めること」よりも、「安全に進めること」を優先する判断です。
圃場の周囲に住宅・道路・人通りがある場合には、近隣の皆様にも安心していただけるよう配慮しながら作業を進めます。 第三者の事故防止はもちろん、作業者自身の安全を第一に 、現場ごとに必要な準備を行っています。
来年度の防除、今から始める準備|お問い合わせ・まとめ
麦の赤かび病防除は、毎年4〜5月の数週間に集中します。各産地で同じタイミングに需要が立ち上がるため、 早めのお問い合わせ・ご予約が重要 です。シーズン直前のご依頼では、適期に間に合わせきれないケースもあります。
エーレンズへのご依頼の流れは、次のとおりです。
- お問い合わせ(HPフォーム・LINE公式・お電話)
- 現地確認・お見積り
- 作業日程の調整(作業日の2週間前まで)
- 散布実施
- 作業報告書のお届け
「今年は様子見だったけど、来年はドローン散布を試してみたい」「うちの圃場でできるのか、まずは相談だけでも」──そういった段階でのお問い合わせも大歓迎です。
お問い合わせは下記までどうぞ。
- HPお問い合わせフォーム:https://a-lens.jp/contact/
- LINE公式アカウント:LINEで「エーレンズ」を検索、または公式アカウントからお気軽にメッセージください
- お電話:0495-21-8229(平日9〜17時)
赤かび病の基礎知識・防除タイミングについては、 小麦の赤カビ病対策はお早めに でも詳しくご紹介しています。2026年春の現場の空気とあわせて、ご覧いただけますと幸いです。
来年の春、上里町の麦畑から全国の食卓まで、安心の麦が届きますように。エーレンズは、地域の中小事業者として、これからも農家さんの現場に寄り添ってまいります。
